「ありがとうの気持ちを贈る ハッピーウエディングBOOK」など書籍の執筆でも知られる、ウエディングプランナー岡村奈奈さんは、感謝や思いを表現する演出プロデュースに定評があります。大切な人を想う気持ちを贈るということ、感謝の背景までも大切な人の心に届き、お互いがもっと愛おしく感じる。そんなあたたかい演出について、岡村奈奈さんに語っていただきました。
・サプライズとは「心」を動かすこと
・いい結婚式の条件とは?
・自分や相手を再発見するステキな機会に
・パラパラ漫画ムービーをおすすめする理由
・ストーリープランナーという存在
・「ありがとう」が伝わる以上の価値
サプライズとは、驚かせるものではなく「想定や期待を超えること」だと思います。
どんなに美味しいもの、素敵なものでも、想定や期待が高いと「感動」のハードルは上がります。前評判のいいお店や記念日のデートの期待値は高くなるもの。そのため、誕生日やプロポーズなど特別な日にはみんな「サプライズを!」と考えるようになりました。
結婚式にもサプライズは欠かせません。
ひとも期待も最大限に集まる場所だから当然でしょう。
サプライズがないとしたら、逆にサプライズと言ってもいいかもしれません。
「喜ぶ」と「驚く」は似ている面があり、また、とくに結婚式においては「ひととは違う」「ゲストを飽きさせない」というような意図から、いわゆるサプライズは「驚かせる」という意味合いが強いように思います。
だから、タイミングなど計画はより緻密になり、失敗がこわくなったり、サプライズを受けたほうも”上手に”大きなリアクションができなかったり、その結果「サプライズは苦手」というひとを生んだりしてしまったりするのです。
「想定や期待を超えること」とは、言い換えれば「思いがけないこと」。
予定調和でない、本当に「心」が動くことです。
伝えたい想いがちゃんと伝わり、贈るほうと贈られるほうの両方の心にポッと暖かな火が点るような「方法」をサプライズと呼びたいと思います。
ウエディングプランナーとして、よく「いい結婚式(披露宴)の条件は?」などと聞かれることがあります。実際その価値はさまざまですが、共通して言えるのは「わかりやすさ」と「一体感」だと思っています。
結婚するふたりのこと、また、ふたりの背景や未来像などがわかりやすく見えていると、親戚やお友達など集まった人たちはそこに招待された価値を感じ、祝福や応援の声をかけやすく感じるものだと思っています。
「相手がどんなひとなのか」わからないと仕事やお友達付き合いにも遠慮が生まれたりしますし、
「ふたりはどうなっていくのか」表明したり、想像させたりしない結婚式では、将来のことをちゃんと考えているのかしら、話し合えているのかしらと心配したくなったりもします。
「一体感」というのは、みんなが集中できるポイントをつくることで、ほんの数分のことでも、全員がひとつのことに夢中になることはとても価値があり、それだけで結婚式(披露宴)の印象が誰かに伝えたいものになったり、強く忘れられないものになったりすると感じています。
同じ気持ちを伝えるにも、やはり「方法」を選ぶことはとても重要です。
結婚式を「感謝を伝えるため」の場だと考えているカップルがとても多いと思うのですが、感謝と言っても「誰に・どんな」と掘り下げていくと「ありがとう」の種類は無限に広がっていきます。
そこで「わかりやすさ」や「一体感」で交通整理をしていくのですが、視覚的な表現は圧倒的に有効です。
ムービーに関しては、世代を問わず、とても目が肥えているので、クオリティは重視しています。披露宴で上映するものなら即席的なものは通用しないと考えるのが無難でしょう。
ゲストの注目を集め、放さないものには「ワクワク感」があります。
例えば、数枚の写真のスライドショーでも、似たポーズを撮る親子とか、関係性がわかる兄弟のツーショットとか、今の趣味や職業を予感させる子ども時代のものとか、何気ないスナップ写真にもストーリーが読み取れるようなものはゲストの興味を引きます。
ところが、この面白さを「本人」はあまり気がつかないことが多いのです。
打合せで持ってきてもらった写真を見て「似てますね!」とか「本当に妹さんと仲良しだったんですね」とか「この頃からこれが好きだったんですか!」などと言うと、新郎新婦はびっくりした顔を見せてくれたりします。
そうやって、自分のことや結婚する相手のこと、相手の家族のことなどをたくさん発見しながら準備が進んでいくことも結婚式を挙げる価値だと思いますし、その発見をヒントにして、結婚式(披露宴)の進行や演出をプランニングしていくと「わかりやすさ」や「一体感」は難しいことではなくなります。
私は「パラパラ漫画ムービー」がとても好きなのですが、なぜだろうかと考えてみると、たしかに結婚式(披露宴)に大事な要素がすべて網羅されています。好きだったり、感動したりするのは、実際もっと感覚的なことですが、あえて「おすすめする理由」を挙げるとすれば、
・ストーリーと繋がりを重視したつくりになっている
・映像に目の肥えたゲストの注目を集め、飽きさせない
・内容が視覚的にわかりやすい
・その場にいる全員で夢中になって見られる
などでしょうか。
写真が流れていくのと違って、パラパラ漫画特有のコマの進み方がリズミカルに視覚に訴えてくることで、大きな会場でも一人ひとりが夢中になって見入ってしまう雰囲気になります。
また一番の魅力は、出会いだとか、結婚を意識した瞬間とか、転機となった言葉とか、写真や記録のないプレシャスな瞬間を映像化できること。本人は細かに覚えているシーンでも、説明するのは難しいもの。まさか、その思い出を紹介したり、共有したり、保存できるなんて。とても素敵なことだと思うのです。
また「感動スタジオ」には「ストーリープランナー」という存在がいるのも大きいと思います。映像など結婚式のための創作物全般は、既存のフォーマットをアレンジ・カスタマイズするか、クリエイター本人と相談することが多いと思います。ストーリープランナーという役目自体が感動スタジオ独自の存在だと思いますが、漫画家と依頼者(新郎新婦)の間をつなぐ、豊かなアイディアやボキャブラリーを持った人たちだと思います。オーダーする前には想像もしなかったような完成形にたどり着けるはずです。
ふたりが招待した、大切なひとたちが、新郎新婦やその周りのひとたちに対して
「こんな面があったんだ」と発見することに加え、
「これまで仲良くしてきてよかった」「これからも変わらず一緒に仕事をしていきたい」「家族ぐるみで付き合っていきたい」など、それぞれの感想を持つことも、出席した価値となります。
これは「ありがとう」が伝わることに大きく勝る意味を持つはずです。
思いがけない喜びを受け取り、帰り道にまたじんわりと「いい結婚式だったな」と思ってもらえたりしたらステキですよね。
岡村奈奈(ウエディングプランナー)
音大卒業後、専門式場などの婚礼施設勤務を経て2005年にフリーに転向。執筆・監修、メディア出演多数。オーソドックスなスタイルから、アウトドアや音楽ホール等でのユニークなウエディング、伝統的な和婚までオールマイティに対応。カウンセリング型のプロデュースに定評がある。「ハッピーウエディングBOOK」(高橋書店)「ウエディングプランナーが教える、結婚式と準備が”もっと”楽しくなる方法」(誠文堂新光社)「結婚する子どものために 親がすること、できること」(日本文芸社)著者。